頚椎症

●頚椎症とは

頚椎症(けいついしょう)は、首の骨である「頚椎」が加齢や日常的な負担により変形・退化し、その周囲の神経や脊髄が圧迫されることで、さまざまな症状を引き起こす疾患です。背骨は頭から腰まで連なる骨の集まりですが、そのうち首の部分が頚椎で、全部で7つの骨から構成されています。頚椎の間には「椎間板」というクッションの役割を持つ組織や、多くの靭帯があります。これらが老化や繰り返しの負担、姿勢不良などによって硬化や変形を起こし、首の周囲や腕、手などに痛みやしびれを生じるのが頚椎症です。

頚椎症にはいくつかのタイプがあります。

 頚部脊椎症:首や肩のこりや痛みが主な症状
 頚椎症性神経根症:腕や手のしびれ・痛み・筋力低下などを伴う
 頚椎症性脊髄症:手足のしびれ、歩行障害、排尿障害など全身的な神経症状

●頚椎症の原因

主な原因は「加齢」によるものです。年を重ねると、椎間板の水分が減って弾力が失われ、骨や靭帯が硬く厚くなりやすくなります。こうした変性によって、骨にとげのような突起(骨棘)ができたり、靭帯がぶ厚くなったり、首の骨が不安定になったりします。これが神経や脊髄の圧迫のもとになります。

その他考えられる原因として、
・長年の首への負担(パソコン作業、スマートフォンの使用、うつむき姿勢の継続など)
・重量物を扱う作業やスポーツ
・体質や遺伝的素因
・姿勢の悪さ
などが挙げられます。最近では若い人でも長時間のデスクワークやスマートフォン使用による姿勢不良で頚椎症になるケースも増えています。

●頚椎症の症状

症状は主に以下の3タイプに分かれます。

1. 頚部脊椎症(局所型)
 ・首や肩、背中の痛み・こり・張り
 ・後頭部の違和感や痛み
 ・頭痛やめまい

2. 頚椎症性神経根症(神経根型)
 ・首から肩、腕、手にかけての痛みやしびれ
 ・一定の動作(首を後ろに反らす、横に倒すなど)で症状が強くなる
 ・手や指の筋力低下・細かい動作のしづらさ

3. 頚椎症性脊髄症(脊髄型)
 ・手足(特に手)のしびれや脱力、細かい動作の障害(箸が使いづらい、ボタンがかけにくいなど)
 ・歩行障害(つまずきやすさ、動作のぎこちなさ)
 ・排尿や排便のトラブル(頻尿、失禁など)

症状は最初軽いことが多く、段階的・慢性的に進行します。急激に症状が出ることはまれですが、高齢になるほど気づかれずに進行する場合があります。

●頚椎症の治療

治療は、症状の程度や進行具合によって保存療法と手術療法に分かれます。

保存療法(手術以外の治療)
安静の指導・姿勢の改善  :首への負担を避ける工夫、デスクワークの合間のストレッチなど
薬物療法          :消炎鎮痛薬(痛み止め、湿布)、筋弛緩薬などで症状を緩和
物理療法・リハビリ    :首の牽引や温熱療法、低周波治療、首や肩の筋肉を鍛える運動療法、ストレッチ
装具療法          :頚椎カラーなどによる首の安定(強い痛みを伴う場合・長期間の使用は筋力低下のため慢性疼痛の原因となります)

手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合や、症状が進行して日常生活に大きな支障が出る場合には、手術が検討されます。手術では、圧迫されている神経や脊髄を開放するために骨や靭帯の一部を取り除いたり、椎骨を固定したりする方法があります。

頚椎症と上手に付き合うために
・長時間同じ姿勢を避け、首や肩をこまめに動かす習慣をつけましょう。
・無理な力仕事やスポーツは控え、首を冷やさないことも重要です。
頚椎症は年齢を重ねるほど誰にでも起こり得る身近な病気です。正しい知識とセルフケア、症状に応じた医療機関での相談が健康的な生活につながります。軽い症状でも、しびれや筋力低下、歩行障害などが現れた場合は早めに整形外科外来にご相談ください。

頚痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。