肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)

●肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)とは

肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)は、一般的に「四十肩」「五十肩」とも呼ばれる疾患で、肩関節の周囲組織に炎症が生じることにより、肩の痛みや可動域制限(動かしづらさ)が現れる病気です。40~60歳代に多く発症し、特に中年以降の方に多くみられます。
肩関節は上腕骨と肩甲骨が接合し、関節包、靭帯、腱、滑液包など複数の組織で構成されています。これらの組織が加齢や使い過ぎ、血行不良などを背景に炎症を起こすことで、肩の痛みや動きの制限が生じます。明らかな外傷や特定の原因がないにも関わらず、発症することが特徴です。
この病気は一つの疾患名というよりも、肩関節周囲のさまざまな組織に炎症が起こる疾患群の総称といえます。医学的には感染症や腫瘍、骨折、脱臼などの明確な原因が除外された場合に「肩関節周囲炎」と診断されます。
肩関節周囲炎はレントゲン上では特に異常がないことも多く、拘縮や痛みが強い例では骨萎縮を認めることもあります。

●肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の原因

肩関節周囲炎の主な原因は、肩関節周囲の組織(骨、軟骨、靭帯、腱など)の老化や変性によるものです。加齢に伴ってこれらの組織が劣化し、炎症が起こりやすくなります。

血行不良
・長時間同じ姿勢を続ける、運動不足、ストレスなどにより肩周囲の血流が悪化し、組織の修復が遅れ炎症が起きやすくなります。

微小な外傷や使い過ぎ
・日常生活や仕事、スポーツなどで肩を酷使することで、肩関節周囲の組織に細かな損傷が蓄積し、炎症を引き起こすことがあります。
基礎疾患
糖尿病や甲状腺機能低下症などの持病を持つ方は発症リスクが高いとされています。

自己免疫反応や心理的要因
体が自分の組織を攻撃する自己免疫反応や、ストレスなども発症や症状の長期化に関与する可能性が指摘されています。

 

肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の症状

肩関節周囲炎の主な症状は、肩の痛みと可動域制限(動かしづらさ)です。日常生活においては特に、後ろで髪を結ぶ、エプロンなど後ろで紐を結ぶ、衣服の着脱の際に痛みが生じます。特に夜間・就寝時に強い痛みが出やすいことが知られており、睡眠障害や不眠症の原因にもなります。

症状は発症からの時期によって変化し、一般的に3つの時期に分けられます。

1. 炎症期(急性期)
肩や腕に強い痛みが生じ、じっとしていてもズキズキと痛む(安静時痛)。
夜間や就寝中に痛みが増し、眠れないこともあります(夜間痛)。
腕を後ろに動かすとさらに痛みが強くなり、日常生活動作が困難になります。

2. 拘縮期(凍結期)
炎症が落ち着いてくると、肩の動きが著しく悪くなります(拘縮)。
腕を上げる、背中に手を回す、髪を整える、服を着替えるなどの動作が困難になり、動かすとつっぱるような鈍い痛みが残ります。

3. 回復期
痛みが徐々に軽くなり、肩の動きも少しずつ改善してきますが、回復までには数か月から1年以上かかる場合もあります。また、肩を動かしたときにカクカクと音が鳴る、朝起きたときに肩がこわばるといった症状もみられます。

肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)の治療

肩関節周囲炎の治療は、症状の時期や重症度に応じて段階的に行われます。主な治療法は以下の通りです。

1. 薬物療法
 消炎鎮痛剤(内服・外用):内服、湿布などで、痛みや炎症を和らげるために使用します。
 ステロイド注射 :強い痛みがある場合や夜間痛がひどい場合、関節内や滑液包にステロイドを注射することで炎症を抑えます。
 ヒアルロン酸注射:関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減します。

2. リハビリテーション、物理療法
温熱療法や超音波治療:血流を改善し、痛みや筋肉の緊張を緩和します。
運動療法(リハビリ):肩関節の可動域を広げるためのストレッチや筋力トレーニングが行われます。痛みが強い時期は無理をせず、拘縮期以降に積極的にリハビリを進めます。

自宅での体操指導:医師や理学療法士の指導のもと、日常的に行える体操も有効です。

3. 神経ブロック注射
強い痛みが続く場合には、神経ブロック注射で痛みの伝達を一時的に遮断し、リハビリテーションを進めやすくします。

4. 手術療法
長期間にわたって症状が改善しない場合や、重度の拘縮が残る場合には、関節包を切開する手術(関節授動術)が検討されます。

5. 日常生活での注意
痛みが強い時は無理をせず、安静を心がけることが大切です。早期に治療を開始することで拘縮を防ぎ、回復を早めることができます。

肩関節周囲炎は自然に治癒することもありますが、適切な治療とリハビリテーションを行うことで、より早期に日常生活への復帰が可能となります。症状が長引く場合や強い痛みがある場合は、早めに医療機関を受診し、医師の指導のもとで治療を進めることが重要です。肩に違和感を覚えたり痛みがある場合は、放置せずに早めにご相談ください。

肩痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。