変形性膝関節症

●変形性膝関節症とは

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、膝関節内の軟骨が長い年月や日常の負担によってすり減り、関節の変形や痛み、動きの障害を引き起こす慢性の疾患です。膝関節は太ももの骨(大腿骨)、すねの骨(脛骨)、膝のお皿(膝蓋骨)などで構成されており、それぞれの骨の端を保護しクッションの役割を果たしているのが「関節軟骨」です。この軟骨が加齢や過剰な負担によって劣化し、通常の動きの中でも骨同士が擦れ合い、やがて炎症や変形、機能障害へと発展します。

加齢とともに頻度が増え、中高年、とくに女性に多く見られる疾患です。日本では約800万人が症状を有しているとされ、40歳以上の55%、60歳以上の女性では男性の1.5~2倍の有病率があると報告されています。

●変形性膝関節症の原因

加齢(老化)・軟骨の摩耗
年齢を重ねることで関節軟骨は弾力性を失い、クッションとしての機能が低下。これが最も頻度の高い原因です。

筋力低下・運動不足
膝周囲の筋肉量が減ると、膝への衝撃緩和や安定性が落ち、軟骨の消耗を早めます。

肥満
体重増加により膝の関節への物理的負荷が増し、軟骨の消耗と炎症が進行します。

性別(女性に多い)
女性ホルモン(エストロゲン)の減少や筋肉量の違いから、閉経後の女性で発症リスクが高まります。

O脚・X脚など膝の形状異常
O脚型では膝関節の内側、X脚型では外側に特に負荷が集中し、関節変形が進行しやすくなります。

過度の負荷・職業性要因
重量物運搬やスポーツ、和式生活(立ち座りの際の負担)が関連する場合も多いです。

外傷や疾患の後遺症
膝の骨折、じん帯や半月板損傷、化膿性関節炎など外傷・感染・他の疾患の後遺症がきっかけとなることもあります(二次性変形性膝関節症)。

遺伝的素因
家族内発症が多いこともわかっており、ある種の遺伝子異常が関係しているとの報告もあります。

●変形性膝関節症の症状

膝の痛みとこわばり
初期は立ち上がりや運動を始めたとき、階段昇降・しゃがみ作業時など動作の開始時に「膝が重い」「動かしにくい」「鈍い痛み」などの症状があります。動き始めると痛みが軽くなるのが特徴です。

腫れ・熱感・水腫
病状の進行とともに膝関節内部で炎症が起こり、滑膜液が増えて「膝に水がたまる」状態となります。膝の腫脹、熱を持つ感覚、膝周囲の圧痛などが現れます。

可動域の低下
曲げ伸ばしできる範囲が狭まり、正座や階段昇降がつらくなります。

O脚(内反膝)やX脚(外反膝)の進行
 膝の骨格が変形し、歩行時の足の形やバランスが崩れることがあります。

進行期・末期症状
病気が進むと安静にしていても痛みが続き、ひどくなると関節の安定性が損なわれ、歩行困難、膝のぐらつき、転倒リスクの増大、最終的には日常生活自立が難しくなります。

●変形性膝関節症の治療

治療は症状や進行具合によって保存的治療(手術以外)と手術的治療に大別されます。

保存的治療(手術以外)
生活指導・運動療法
正しい体重管理や膝への負担を軽減する生活習慣の見直しが基本となります。また太ももなど膝周囲の筋力トレーニングやストレッチによって軟骨や関節の保護、痛み緩和、可動域向上を目指します。

物理療法・装具療法
温熱療法や電気治療、膝サポーターや足底板の使用により関節の支持や膝負担を軽減します。

薬物療法
消炎鎮痛剤(内服・外用薬)、ヒアルロン酸の関節内注射がよく行われます。

関節穿刺
水が溜まって痛みが強い場合、関節液を抜く処置も併用されます。

手術療法
保存的治療で十分な効果が得られない場合や、日常生活への深刻な影響がある場合は手術が検討されます。

関節鏡視下手術
軽度な場合、関節内の異物や遊離体の除去などを行います。

骨切り術
膝の骨の向きを矯正し、負担のかかる部分を変える手術です。

人工膝関節置換術
重度の場合、損傷した関節部分を人工関節に置き換える手術が行われます。手術後はリハビリを行い、早期の社会復帰やQOL(生活の質)改善を目指します。

変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、日頃の運動習慣や体重管理、筋力維持などのセルフケアで進行を遅らせたり症状を軽減したりできます。膝周囲の違和感・痛みを感じた場合は、早めに専門医に相談し、適切な治療と予防策を進めましょう。お気軽に整形外科外来までご相談ください。

 

膝痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。