膝関節半月板損傷

膝関節半月板損傷とは

半月板損傷は、膝(ひざ)の関節の中にある「半月板」という組織が、損傷することによって起こるケガや病態です。

半月板の役割
半月板は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間にある、C型または半月型をした軟骨様の組織です。膝関節には内側と外側に一つずつ、計二つの半月板があります。

半月板には、主に以下の重要な役割があります。

衝撃の吸収(クッション材)
運動時や歩行時に、体重や地面からの衝撃を吸収し、骨や軟骨への負担を和らげます。

関節の安定化
大腿骨と脛骨の形の違いを埋めることで、関節がスムーズに動き、膝の安定性を高めます。

荷重の分散
膝にかかる体重を広く分散させ、関節軟骨がすり減るのを防ぐ役割があります。

この重要な半月板が、外力や加齢によって傷ついたり、割れたり、欠けたりした状態が「半月板損傷」です。

 

半月板損傷の原因

半月板損傷は、その原因によって大きく「外傷性」と「変性(非外傷性)」の2つに分けられます。

1. 外傷性損傷(急なケガ)
スポーツ外傷: 若い方やスポーツをする方に多く見られます。

膝をひねる動き: スキー、サッカー、バスケットボールなど、急な方向転換や、ジャンプの着地で膝に大きなねじれの力が加わったとき(特に足が地面に固定された状態で体だけをひねったとき)に起こりやすいです。

接触プレー: 外部からの強い衝撃が膝に加わったとき。

多くの場合、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)などの他の靭帯損傷を合併して起こることがあります。

2. 変性損傷(加齢に伴うもの)
加齢変化: 40歳以降の中高年の方に多く見られます。

長年の使用や加齢に伴い、半月板の水分量が減り、弾力性が失われてもろくなります。

特別強い外力がなくても、日常生活の中での立ち上がりやしゃがみ込み、階段の上り下りといったわずかな動作で損傷してしまうことがあります。

この場合、**変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)**という病気の初期段階として、または合併症として発症することも多いです。

 

半月板損傷の症状

半月板損傷の症状には個人差がありますが、特徴的なのは以下の症状です。

痛み(疼痛)
・損傷した部分に一致した痛みを感じます。
・特に膝を曲げ伸ばししたときや、ひねったときに痛みが強くなります。
・階段の上り下りや深くしゃがみ込む動作で痛みが増すことが多いです。

ひっかかり感(キャッチング)
・膝を動かしたときに、何かが関節に挟まるような、引っかかるような感覚があります。

ロッキング現象
・損傷した半月板の一部が関節の間に挟まり込み、**膝が急に動かなくなる(曲げられなくなる、または伸ばせなくなる)**状態です。
・激しい痛みとともに関節の動きが固定されてしまうのが特徴で、すぐに治療が必要となることが多い症状です。

腫れ・水がたまる
・関節内に出血や炎症が起こることで、膝の関節に水(関節液)が溜まったり、全体的に腫れたりすることがあります。

 

半月板損傷の治療

半月板損傷の治療は、損傷の程度、場所、症状の強さ、患者様の年齢や活動性に応じて決定されます。大きく分けて「保存療法」と「手術療法」があります。

1. 保存療法(手術をしない治療)
損傷が比較的軽度である場合や、症状が軽ければ、まず手術をせずに症状の改善を図ります。

・宇安静・固定
炎症を抑えるために、しばらくの間、膝に負担をかけないように安静にします。装具(サポーターやブレース)を使って膝の安定を図ることもあります。

・薬物療法
痛みや炎症を抑えるための内服薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)や、膝の関節内にヒアルロン酸やステロイドの注射を行うことがあります。

・リハビリテーション
膝の周囲の**筋力トレーニング(特に太ももの筋肉)**を行い、半月板にかかる負担を軽減させ、膝関節を安定させます。

 

2. 手術療法
症状が強く、日常生活に支障がある場合や、ロッキング現象が起こっている場合、保存療法で改善が見られない場合は手術が検討されます。

関節鏡(かんせつきょう)手術
現在、半月板損傷のほとんどは、関節鏡と呼ばれる内視鏡を使った手術で行われます。膝に小さな穴を数カ所開けるだけで済むため、体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。

・半月板縫合術
損傷の場所や状態によっては、半月板を縫い合わせて温存します。半月板を温存することで、将来の変形性膝関節症のリスクを下げることができますが、治癒には時間がかかります。

・半月板切除術
損傷が複雑で縫合できない場合や、血流が悪く治癒の見込みが低い場合は、損傷した部分だけを切除し、引っかかりや痛みの原因を取り除きます。切除後は症状の改善が早いですが、半月板の機能が一部失われるため、膝への負担は少し増えます。

治療法は、患者様の希望も踏まえて整形外科医が最も適切なものを提案しますので、ご安心ください。

 

膝痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。