大腿骨骨折(転子部・頚部)

●大腿骨骨折(転子部・頚部)とは

大腿骨骨折は、太ももの骨(大腿骨)の上部に起こる骨折で、特に頚部骨折と転子部骨折の2つの種類に分けられます。

大腿骨頚部骨折
大腿骨の「骨頭」と骨盤の関節(股関節)をつなぐ細くなった部分を「頚部」と呼びます。頚部骨折はこの股関節内にある骨折で、関節包という膜の内側で起こります。

大腿骨転子部骨折
頚部のすぐ下にある太く大きく出っ張った部位を「転子部」といいます。転子部は関節外側で、筋肉に囲まれた部分です。

この2つの部位の骨折は、発生する場所や骨の血液供給の状況、骨のくっつきやすさ、治療方法に違いがあります。どちらも高齢者に多く発生し、特に骨粗鬆症がある場合にリスクが高まります。

 

●大腿骨骨折(転子部・頚部)の原因

高齢者の転倒
特に高齢者では骨粗鬆症の影響で骨が弱くなっており、日常生活でのちょっとした転倒や段差で大腿骨頚部や転子部を骨折しやすくなります。

骨粗鬆症
骨密度が低下し骨がもろくなるため、軽い衝撃でも骨折が起こりやすくなります。

交通事故や高所からの転落
若い人の場合はこれらの激しい外力によって起こることもあります。

その他のリスク要因
筋力低下やバランス感覚の悪化、視力障害、認知症など転倒しやすい状況も骨折の原因になります。


●大腿骨骨折(転子部・頚部)の症状

痛み
骨折した側の股関節や太ももに強い痛みを感じ、動かすことが非常に困難になります。頚部骨折は痛みが比較的少ないこともありますが、動かした時などに強い痛みが出ます。

運動制限・歩行困難
立つことや歩くことが難しくなり、自力での移動が困難になります。

脚の変形
折れた骨の影響で脚の長さや角度が変わり、骨折側の脚が短くなったり外側に回旋(ねじれ)したように見えることがあります。

腫れや内出血
骨折部周囲に腫れやあざができることもあります。


●大腿骨骨折(転子部・頚部)の治療

手術療法が基本
骨折の重症度にかかわらず、多くの場合は手術療法が推奨されます。手術により骨折部を固定し、骨のずれを整えて早期の歩行とリハビリを目指します。長期間安静にしていると筋力低下や肺炎などの合併症のリスクが高まるためです。

大腿骨頚部骨折の手術
頚部骨折は骨がくっつきにくい性質があり、骨折のずれが大きい場合や高齢者では骨頭の血流が妨げられて骨頭壊死になるリスクがあるため、「人工骨頭置換術」や「人工関節置換術」が選ばれることが多いです。骨折部のずれが小さい場合は、骨をネジなどで固定する「骨接合術」が行われることもあります。

大腿骨転子部骨折の手術
転子部骨折は骨への血流が良いため、骨がつきやすい特徴があります。ネジやプレート、専用の骨接合器具(コンプレッションヒップスクリュー、ガンマーネイルなど)を使って骨折部をしっかり内固定します。骨癒合が良好なため、比較的早期に歩行訓練を開始できます。

保存療法
全身状態が非常に悪く手術ができない場合に限り、寝たきりの安静管理が選択されますが、長期の寝たきりは筋力低下や肺炎、褥瘡(床ずれ)などのリスクが高いため極力避けられます。

リハビリテーションと予防
・早期に手術後のリハビリを開始し、筋力の回復や歩行機能の改善を目指します。
・骨粗鬆症の治療として、カルシウムやビタミンDの補充、薬物療法を行い骨密度の維持を図ります。
・転倒予防のため、住環境の整備(バリアフリー化)、体力・バランス強化が重要です。

大腿骨骨折は高齢者の生活の質に大きな影響を与えますが、適切な手術とリハビリにより多くは元の生活への復帰が期待できます。転倒後に痛みや歩行障害を感じたら、自己判断せず速やかに整形外科を受診しましょう。当院にお気軽にご相談ください。

 

臀部痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。