●変形性腰椎症とは
変形性腰椎症とは、背骨の腰の部分(腰椎)が加齢や日常生活の負担により変形や老化が進み、腰に痛みや不快感、そして運動制限を引き起こす疾患の総称です。腰椎は複数の骨(椎骨)が積み重なり、間に椎間板というクッションがあって衝撃を和らげています。しかし、加齢に伴い椎間板の水分が減り薄くなったり、椎間関節の軟骨がすり減ったりすることで骨同士が直接ぶつかるようになり、骨のトゲ(骨棘)ができることもあります。
こうした変化は腰部の構造的な不安定性となって痛みを生じたり、周囲の神経を刺激して脚にしびれや痛みを引き起こすこともあります。多くは60歳以上の高齢者に発症しやすく、特に体重の増加や姿勢の悪さ、長期間の重労働などによる腰への慢性的な負担がリスクです。
●変形性腰椎症の原因
変形性腰椎症の主な原因は「加齢による椎間板や関節の変性」です。
椎間板の摩耗・変性
年齢とともに椎間板の弾力が失われ水分が減り、クッション機能が低下します。これにより椎骨同士の衝撃が増えるため、椎間関節の軟骨がすり減りやすくなります。
骨棘(骨のトゲ)の形成
関節の不安定性を補うために骨の端に骨棘ができることが多く、このトゲが神経や周囲組織を刺激して痛みを生みます。
椎間関節の変性や靭帯の肥厚
関節のすり減りや靭帯の肥厚が起こると、腰椎の動きが制限されたり神経を圧迫したりします。
生活習慣
長時間の座位姿勢や中腰での作業、重量物の持ち運び、肥満、運動不足、喫煙なども腰椎へ負担をかけ、発症や症状を悪化させます。
●変形性腰椎症の症状
慢性的な腰痛
長期間続く腰の痛みや重だるさが多く、動作開始時や長時間同じ姿勢でいると悪化しやすいです。起床時のこわばりや動き出すと痛みが和らぐことも特徴です。
運動制限
腰の曲げ伸ばしや回旋がしにくくなり、日常生活での動作に支障が出ることがあります。
神経症状(坐骨神経痛)
腰椎の変形が神経根を圧迫すると、片側または両側の臀部や太もも、ふくらはぎ、足先にかけて痛みやしびれ、冷感、筋力低下が生じることがあります。歩行時のしびれや痛みで長時間歩けないこともあります。
姿勢の変化や腰の変形
症状が進むと腰が曲がってしまったり、歩行に影響が出たりすることがあります。
これらの症状は患者様によって程度や進行の仕方が異なり、初期症状では日常生活に大きな支障がない場合もありますが、無理な動作や放置により悪化することが多いので、早めの対策が重要です。
●変形性腰椎症の治療
治療は症状の重さや進行状況によって段階的に行われます。
1. 保存療法(主に手術以外の治療)
生活習慣の改善
体重管理や長時間同じ姿勢を避ける、腰に負担をかけない姿勢や動作を心がけます。
運動療法・リハビリ
腹筋や背筋、体幹の筋力強化とストレッチを行い、腰椎の安定と柔軟性を高めます。無理のない範囲で継続することが症状軽減に効果的です。
薬物療法
消炎鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)や筋弛緩薬、痛みを和らげる外用薬が用いられます。
物理療法
温熱療法、低周波治療、牽引療法などで痛みの緩和や血行促進を図ります。
装具療法
コルセットの使用で腰の動きを安定させ、痛みの軽減に役立つことがあります。
痛みの強い部位の注射療法(トリガーポイント注射など)
筋肉のこりや炎症部位に注射を行うこともあります。
2. 手術療法
保存療法で効果が乏しい場合や神経症状が進行し日常生活に支障が出る場合に検討されます。手術は、腰椎の変形箇所の除圧術(神経を圧迫している骨や靭帯を取り除く)、不安定になった腰椎の固定術などが選択されます。手術は専門医と十分に相談し、生活の質を改善する目的で行われます。
変形性腰椎症は加齢にともない誰にでも起こりうる、慢性的な腰の変性疾患です。しかし、生活習慣の見直しや適切な運動、医療機関での早期診断・治療を行うことで、症状の進行を抑え、痛みを和らげて日常生活の質を保つことが可能です。腰の違和感や痛み、しびれを感じたら早めに専門医へ相談しましょう。お気軽にご相談ください。