上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

●上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは

 上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)、一般的には「テニス肘」と呼ばれる疾患は、肘の外側に痛みが現れる病気です。肘の外側には「上腕骨外側上顆」と呼ばれる骨の突起があり、ここに付着する筋肉や腱の炎症や損傷によって発症します。名前の通り、テニスやラケット競技をする中高年の愛好者に多く見られますが、スポーツをしない一般の方にも発症することがあります。特に40代、50代の方に多いという特徴があります。


●上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の原因

 テニス肘の主な原因は、手首を伸ばす筋肉(特に短橈側手根伸筋)が肘の外側(上腕骨外側上顆)に付着している部分で繰り返し負担がかかることです。スポーツ、特にテニスのラケットを振る際の動作(バックハンドなど)でよく発症するため「テニス肘」と名付けられましたが、日常動作や仕事でも起こります。

スポーツに由来する場合:テニスやバドミントン、卓球、ゴルフ、剣道など、肘や手首を酷使する動きが多い競技で発症しやすいです。

職業や家事の場合:重い鍋を振る、草引き、包丁で硬い物を切る、掃き掃除、荷物の持ち運び、パソコンのキーボード操作などで同じ部位に繰り返し負担がかかると、炎症や微細な損傷が蓄積されます。

加齢による影響:年齢と共に筋肉や腱の柔軟性が低下し、同じ程度の負担でも損傷を受けやすくなります。


●上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の症状

 テニス肘の症状は肘の外側の痛みが中心ですが、その特徴は以下の通りです。

特定の動作で痛む
 タオルを絞る、物を持ち上げる、瓶のフタを開ける、ドアノブを回す、フライパンを使う、パソコン作業など、手首や肘を使う瞬間に痛みを感じます。

痛みの範囲
 痛みは肘の外側~前腕にかけて広がることがあります。ひどくなると肘から手首付近まで響くこともあります。

通常は安静時に痛まない
 日常生活で腕を使うときに痛みが出ますが、多くの場合、何もしない安静時にはほとんど痛みはありません。

慢性化の傾向
 発症しても症状が軽いうちは放置しがちですが、治療・休養をせずに腕を使い続けると長引いたり、日常生活に支障が出たりすることがあります。



●上腕骨外側上顆炎(テニス肘)の治療

 基本的には保存的治療(手術以外の治療)がほとんどで、以下のような方法が行われます。

1. 安静・負担の回避
 痛みを引き起こしている動作や運動を控えることが最も重要です。
日常動作の工夫(強い握り動作・手首を返す動きの制限、重いものを持つときは肘を体に近づけるなど)。

2. 薬物療法
 主に湿布薬や消炎鎮痛剤(外用薬、内服)が用いられます。痛みが強い場合は、腱付着部へのステロイド注射が行われることもあります。

3. サポーター・バンド
 テニス肘専用のサポーターやエルボーバンドを装着し、筋肉・腱にかかるストレスを軽減します。

4. リハビリテーション
 前腕伸筋群のストレッチや筋力トレーニングを行い、筋肉の柔軟性や強度を高め再発予防に努めます。
ストレッチの例:腕を前に伸ばし手首を手の平側にゆっくり曲げる、反対の手で指を優しく引っ張るなど。

5. 先進的治療
 自己血小板由来成長因子(PFC-FD)注射など、組織の修復を促す治療も一部で行われます。

 難治性の場合、数ヶ月にわたる保存療法でも症状が改善しないときには、腱の変性部を切除する外科的手術や内視鏡手術が選択されることもありますが、ごく稀です。

6. 予防
・肘や手首への負担が少ない正しい動作、フォームの習得。
・筋肉や腱の柔軟性を保つストレッチや筋力トレーニングの継続。

 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は、誰にでも起こりうる身近な障害です。痛みが続く場合は我慢せず整形外科医へ相談し、適切な診断と治療を受けることが大切です

 

肘痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。