足底筋膜炎

●足底筋膜炎とは

足底筋膜炎は、足の裏にある「足底筋膜」という腱組織に、炎症が起きたり、小さな損傷(微細な断裂)が生じたりして、痛みが発生する病気です。

足底筋膜は、かかとの骨から足の指の付け根まで扇状に広がる、強靭な線維性の膜です。また、歩いたり走ったりするときに、足の裏のアーチ(土踏まず)を支えるとともに、地面からの衝撃を吸収するバネのような役割を果たしています。

この足底筋膜に、繰り返し過度な負荷がかかることで、主にかかとの骨に付着している部分に負担が集中し、炎症や損傷が起こるのが「足底筋膜炎」です。

 

●足底筋膜炎の原因

足底筋膜炎は、足底筋膜に繰り返しストレスがかかることで発症します。主な原因は以下の通りです。

ランニングやウォーキングなど、足に負担のかかる運動を急に始めたり、運動量を急に増やしたり、特に、硬い路面でのトレーニングや、長時間の立ち仕事に従事している方に多く見られます。

扁平足や、甲高、筋力の低下や柔軟性の欠如、クッション性の低い靴や、底の硬い靴、サイズが合っていない靴を履いていると、足への衝撃が直接伝わりやすくなり、炎症が起きます。

また、40〜50代以降になると、足底筋膜の弾力性が低下し、小さな負荷でも損傷しやすくなります。

 

●足底筋膜炎の症状

足底筋膜炎の症状は非常に特徴的です。

起床時の一歩目の痛み
朝起きて床に足をついたときや、長時間座っていた後に急に立ち上がったときの最初の一歩に、かかと(踵骨の付け根付近)に激しい痛みを感じます。数歩歩くと足底筋膜が温まり、痛みが軽減することが多いです。

かかと周囲の圧痛
特にかかとの骨の前内側(土踏まずの始まりのあたり)を押すと、強い痛みを感じます。

運動後・夕方の痛み
運動中は比較的痛みが少ないことがありますが、運動後や、一日の終わりで疲労が溜まった夕方になると、再び痛みが強くなることがあります。

土踏まずの張りや痛み
炎症が広範囲に及んでいる場合、かかとだけでなく土踏まず全体に沿って痛みや張りを感じることがあります。

痛みを感じる部分の骨に、まれに「骨棘(こつきょく)」というトゲ状の突起ができていることがありますが、これは痛みの直接の原因ではなく、長期間のストレスが骨に加わった結果できるものであることが多いです。

 

●足底筋膜炎の治療

足底筋膜炎は、適切な治療とケアを行えば比較的治りやすい病気ですが、炎症を繰り返しやすいため、根気よく治療を続けることが大切です。

1. 保存療法(手術をしない治療)
ほとんどの患者様は保存療法で改善します。治療の目標は「炎症を抑えること」と「足底筋膜にかかる負担を減らすこと」です。

・安静とアイシング
痛みが強い時期は、ランニングなどの原因となる運動を控えることが基本です。炎症部位を冷やす(アイシング)ことも有効です。

ストレッチ
ふくらはぎの筋肉とアキレス腱を伸ばすストレッチを毎日行い、足底筋膜への緊張を和らげます。足の指を反らすストレッチも効果的です。特に朝起きた直後に行うと、起床時の一歩目の痛みが軽減されます。

・インソール(足底板)
土踏まずのアーチをサポートし、足底筋膜への衝撃と負担を減らすオーダーメイドまたは市販のインソールが非常に有効です。

・薬物療法
痛みや炎症を抑えるための内服薬(NSAIDs)や、痛みが強い場合は炎症部にステロイドなどの注射を行うことがあります。

・物理療法
超音波治療、電気治療、温熱療法などを組み合わせて、血行を促進し、組織の修復を促します。

 

2. 手術療法
保存療法を6ヶ月以上続けても改善が見られず、日常生活に大きな支障をきたしているごく一部の難治例に対してのみ検討されます。炎症を起こしている足底筋膜の一部を切開または切除することで、過度な張力を解放し、痛みを改善させます。

*治療の鍵は、毎日のストレッチとインソールによる負担軽減です。気になる症状のある方は、お気軽にご相談ください。

 

足痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。