アキレス腱断裂

●アキレス腱断裂とは

 アキレス腱断裂は、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)が踵(かかと)の骨につながる強力な腱「アキレス腱」が部分的または完全に切れてしまうけがのことです。アキレス腱は、つま先立ちや歩く、走る、ジャンプする動作で重要な役割を果たしています。断裂するとこの機能が損なわれ、足首を動かす力が弱くなり、歩行や立つことが困難になります。特にスポーツをしている若年~中年層に多く見られますが、高齢者の日常動作でも起こりうる傷害です。

●アキレス腱断裂の原因

 アキレス腱断裂は、主にアキレス腱に強い引き伸ばされる力(伸張ストレス)がかかり、ふくらはぎの筋肉が強く収縮したときに起こります。具体的には以下のような状況で発生しやすいです。

・ダッシュ、ジャンプ、方向転換、踏み込みなど、急な動作をしたとき
・スポーツ競技(テニス、バドミントン、バレーボールなど)での激しい動き
・加齢に伴うアキレス腱の変性(柔軟性や血流の低下)
・アキレス腱に繰り返しの微小外傷が蓄積して腱の組織が弱くなっている場合
・40~50代のスポーツ未経験者が急に運動した場合にも起こりやすいです

 高齢者の場合は転倒や階段踏み外しなどの軽い外力でも断裂することがあります
腱の血流が悪く、慢性的に変性した部位(踵骨から約2~6cm上)で切れやすいことが多いです。

●アキレス腱断裂の症状

 アキレス腱断裂の典型的な症状としては、断裂した瞬間に「ブチッ」「バンッ」という破裂音がしたり、後ろから強く蹴られたような衝撃を感じることがあります。また、ふくらはぎや踵の裏に痛みが強く出る、断裂した脚にほとんど体重をかけられなくなる(歩きづらい、歩けない)、つま先立ちができなくなる(ふくらはぎの筋肉が正常に働かないため)、断裂部にへこみ(陥凹)が触れることがあります。
軽い断裂の場合は、痛みが落ち着くと多少歩けることもあるが、足首の動きは制限されます。
症状がはっきりしないこともあり、診断には触診やトンプソンテスト(ふくらはぎをつまんだ時につま先が動くかを調べる)などが使われます。

診断には触診のほか、超音波検査やMRI検査が有用です。

●アキレス腱断裂の治療

 アキレス腱断裂の治療は、大きく「保存療法」と「手術療法」に分けられます。どちらも適切な治療とリハビリを組み合わせることが重要です。

保存療法(手術をしない治療)
足首をギプスや装具で固定し、腱の回復を待ちます。通常は足首をつま先が下を向くようにして固定し、腱の断端が近づきやすくします。

メリットは手術のキズや感染リスクがないですが、デメリットは固定期間が長くなりやすく、再断裂のリスクが手術療法よりやや高いことがあります。
治療期間は約3ヶ月で、日常歩行は固定除去後に始まりますが、スポーツ復帰には6ヶ月以上かかることが一般的です。

手術療法(アキレス腱縫合術など)
 断裂したアキレス腱を縫合してつなぎ合わせる手術です。
メリットは再断裂のリスクが低く、早期からリハビリが可能なため筋力や関節可動域の回復が速い点です。
術後は一時的にギプスや装具で固定しますが、保存療法に比べて固定・免荷期間は短くなります。
早期のスポーツ復帰や日常生活復帰が望めるため、特に若年アスリートや活動的な人に多く選ばれます。

リハビリテーション
 治療開始後は、関節の可動域訓練や筋力トレーニングを段階的に進め、腱の回復と筋機能の向上を図ります。リハビリは治療成功の鍵であり、焦らず計画的に行うことが大切です。

 アキレス腱断裂を予防するためには、日頃から足首やアキレス腱のストレッチを行い、柔軟性を保つことウォーミングアップやクールダウンを適切に行うこと、自分に合った靴を履き、足の形や歩き方に注意しましょう。
 アキレス腱断裂は突然の激しい痛みとともに歩行困難を招くことが多く、早期の診断と治療が回復のポイントです。断裂を疑ったら速やかに整形外科専門医に相談し、適切な治療方針を決定することが重要です。手術・保存療法のどちらを選んでもリハビリをきちんと行うことで、良好な回復が期待できます。お気軽る大門病院整形外科にご相談ください。


足痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。