●変性側弯症とは
変性側弯症(せきついそくわんしょう)とは、加齢に伴って背骨(脊椎)が横方向に曲がる状態を指します。通常、背骨は首から腰にかけてまっすぐに並んでいますが、この病気では背骨が「C」字型や「S」字型に曲がり、姿勢が崩れたりバランスが悪くなったりします。特に中高年以降の方に多く見られ、女性に多い傾向があります。この側弯は、先天的なものや若い人に見られる側弯症とは異なり、脊椎の椎間板や椎間関節の老化、筋肉の衰え、骨の変形などにより、背骨の安定性が失われて起こります。これによって背骨の不均衡な負担がかかり、側弯が進行していくのが特徴です。
●変性側弯症の原因
主な原因は加齢による脊椎の退行性変化です。
椎間板や椎間関節の変性
加齢によって椎間板が水分を失い薄くなり、椎間関節の軟骨がすり減るため背骨の動きが不安定になります。
骨粗しょう症
骨密度が低下すると椎骨が変形しやすくなり、圧迫骨折が生じることで背骨が曲がりやすくなります。
筋力低下と姿勢の悪化
背骨を支える筋肉(背筋や腹筋)が弱くなると、脊柱を真っすぐに支えられなくなり、側方に曲がりやすくなります。また長年の悪い姿勢や前傾姿勢が側弯の進行に拍車をかけます。
遺伝的要因や生活習慣
家族に側弯症の人がいる場合や、重労働、長時間の不良姿勢での作業習慣もリスクを高めます。
加齢による靭帯変性
背骨の間の靭帯が硬くなることで脊椎の可動域が制限され、不均衡が生まれやすくなります。
●変性側弯症の症状
症状は軽度から重度までさまざまですが、一般的な症状としては以下が挙げられます。
腰や背中の痛み
初期は腰痛や背部のだるさ・重さが主な症状で、長時間立ったり座ったりすると悪化します。
姿勢の変化
背骨が曲がることで体のバランスが崩れ、肩の高さが左右で違う、背中が斜めに見える、片側に体重がかかるなど外見的な変化が現れます。
腰部や足のしびれ・痛み
側弯が進行し背骨の中を通る神経(神経根や馬尾)が圧迫されると、腰から足にかけてしびれや痛み、筋力低下が生じ、歩行障害につながることがあります。
日常生活の制限
長時間の立位や歩行が困難になり、体のバランスが悪く転倒しやすくなることもあります。
内臓への影響
重度の側弯症では胸郭の変形により、呼吸機能や消化機能に影響が出ることがあります。
逆流性食道炎のリスク増加
背骨の前傾や変形により胃酸の逆流が起こりやすい傾向があり、胸やけや食道の炎症を引き起こすことがあります。
●変性側弯症の治療
変性側弯症の治療は、症状の程度や進行状況、患者さんの年齢や生活スタイルに応じて多角的に行われます。
保存療法
生活習慣の見直し
長時間の同じ姿勢を避け、姿勢改善に努めることが大切です。適度な運動やストレッチで筋力を維持し、背骨を支える筋肉を強化します。
薬物療法
腰や背中の痛みには消炎鎮痛剤が用いられ、神経圧迫症状がある場合は神経障害性疼痛に対応する薬も使用されます。
装具療法
コルセットなどで腰や背骨の負担を軽減し、症状の緩和を図ります。
リハビリテーション
筋力トレーニングや柔軟性を高める運動療法により、脊柱の安定性を高め症状の進行を抑えます。
神経ブロック注射
痛みが強い場合や神経症状がある場合は、神経周囲に局所麻酔薬やステロイド注射を行い、一時的な痛みの緩和を図ることがあります。
手術療法
保存療法で効果がなく、日常生活に重大な支障がある場合や神経障害が進行している場合に検討されます。
手術では、背骨の変形を矯正し、神経の圧迫を解放する「除圧術」や、脊椎を金具で固定する「脊椎固定術」が行われます。近年では患者様の状態によっては傷の小さい内視鏡手術や低侵襲手術も増えてきています。手術後はリハビリを継続し、筋力の回復や姿勢の改善を図ります。
変性側弯症は加齢に伴う自然な変化の一つですが、適切な検査と早期治療で症状の進行を抑え、痛みの軽減や生活の質の維持が可能です。腰や背中の痛み、姿勢の変化、足のしびれなど気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。