ヘバーデン結節

●ヘバーデン結節とは

 ヘバーデン結節は、手の指先にある第1関節(医学的には「DIP関節」=遠位指節間関節)が変形し、腫れや痛み、曲がりなどを引き起こす病気です。特に人差し指から小指にかけて、関節の背側に小さなコブ(結節)が2つできるのが特徴です。この病気は18世紀のイギリスの医師ウィリアム・へバーデンによって最初に報告されたため、その名前がついています。
指の変形や腫れだけでなく、患部の動きが悪くなり、物を強く握るのが難しくなるなど、日常生活にも影響が及ぶことがあります。男性にも起こることがありますが、特に40歳以上の女性に多く見られるのが特徴です。


●ヘバーデン結節の原因

 はっきりした原因は分かっていません。ただし、以下の要因が関わっていると考えられています。

・加齢や関節の酷使
年齢を重ねると関節の軟骨がすり減りやすくなり、指先をよく使う動作(家事、手芸、パソコン作業など)がきっかけになることが多いと考えられています。

・女性ホルモンの変化(エストロゲン減少)
更年期以降の女性に多いことから、女性ホルモン(エストロゲン)の減少が指の関節を包む膜(滑膜)の弱化につながり、発症リスクを高める可能性が指摘されています。

・遺伝的要素や家族歴
家族内で症状が見られることもあり、遺伝的な体質も関与していると考えられますが、明確な遺伝子はまだ特定されていません。


●ヘバーデン結節の症状

・第1関節の腫れ、赤み、痛み
 特に人差し指から小指にかけて出やすいですが、親指にも起こることがあります。

・指の変形・曲がり
 骨が出っ張るため、指がまっすぐ伸びず曲がってしまいます。爪の形が凸凹になることもあります。

・水ぶくれ(ミューカスシスト/粘液嚢腫)の出現
 第一関節の近くに、透明または白いぷっくりとしたできものが現れることがあります。

・指の動きが悪くなる、強い痛みの発生
 指先に力が入りにくくなる、物を握る、つまむなどの日常動作が困難になる、ぶつけた時や、繰り返し使った時に痛みが強くなります。

 進行すると強い痛みは落ち着くこともあるが、変形は残ることもあります。関節がグラグラ動くようになったり、安静時にも痛みを感じる場合がある。症状の出方や進行速度は人によって異なり、症状が軽く済む人もいれば、日常生活に大きな支障が出るほど悪化する場合もあります。


●ヘバーデン結節の治療

 ヘバーデン結節は根本的な治療法がないとされていますが、痛みのコントロールや進行の防止を目的に様々な方法が行われています。

保存療法(手術以外の治療)
指に負担をかけないように、安静・サポーターやテーピングなどで、関節を固定します。
急性期(腫れて痛みが強い時)では、冷やし、慢性期は温めて血流を良くし、痛みやこわばりをやわらげる

消炎鎮痛薬(外用・内服)痛みや炎症を抑える薬
ステロイド局所注射
関節内に痛み止めを注射(必要がある場合のみ)
リハビリや運動療法
関節の硬さを防ぐストレッチなど

手術療法
 保存療法で十分に効果が得られない、痛みや変形が強く日常生活に支障が出ている場合には、手術も選択肢になります。

関節固定術
 変形した関節を固定し、痛みの軽減を図る方法

関節形成術・コブ切除
 できもの(結節)を取り除く

動脈注射療法
 手首の動脈に細い針で薬剤を注入する治療(動注治療)も行われています。


日常生活で気をつけること
・指先の使い過ぎを避ける
・適度な運動とエクササイズで関節の柔軟性を保つ
・痛みが強いときは無理をせず、医療機関を受診する

 ヘバーデン結節は40代以降の女性に多い手指の病気で、指先の第一関節が腫れたり変形したりします。原因ははっきりしませんが、加齢や女性ホルモンの影響、指の酷使などが考えられています。根本的な治療は困難ですが、症状の進行を遅らせたり、痛みを和らげる治療法がいくつかあります。少しでも症状に気付いたら、我慢せず早めに整形外科など専門医を受診しましょう。

手指痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。