ばね指

●ばね指とは

 ばね指(医学的には「弾発指」や「屈筋腱腱鞘炎」と呼ばれる)は、指が曲げ伸ばしの際に急に引っかかったり、ばねのような動きを示したりする疾患です。指を曲げるための腱(屈筋腱)は、靭帯性腱鞘というトンネル状の構造の中を滑らかに動くことで、指がスムーズに動かせるようになっています。しかし、腱鞘と腱の間で炎症が起こり、通り道が狭くなったり摩擦が生じたりすると、腱の動きが悪くなり「引っかかり」や「弾発現象」が発生します。
一度引っかかった指を伸ばそうと力を入れると、「カクン」と弾かれたように急に伸びる様子から「ばね指」と呼ばれています。年齢や性別、生活習慣に関係なく誰にでも起こりうる疾患ですが、更年期の女性や妊娠・出産期の女性、糖尿病患者などに多く見られます。男性よりも女性の方が多く、先天的に小児にも認められる場合があります。

●ばね指の原因

指の使いすぎ
 日常的にパソコン操作、ピアノや楽器演奏、家事や育児、工場や現場作業など、手や指を酷使する方に多く発症します。

加齢やホルモンバランスの変化
 更年期以降の女性や妊娠・出産後の女性は、ホルモンバランスの影響で腱や腱鞘が弱くなりやすく、発症しやすい傾向にあります。

基礎疾患の影響
 糖尿病や関節リウマチ、人工透析中の方は腱や腱鞘への血流障害や組織のもろさがあり、ばね指のリスクが高いことが知られています。

その他
 まれですが、乳幼児でも先天的な腱の異常や急激な成長過程で発症することがあります。


●ばね指の症状

指の曲げ伸ばし時の引っかかり感
 指を曲げた後、伸ばそうとすると急に「カクン」とばねのようにはじける現象(ばね現象)が出ます。

痛み・腫れ・熱感
 手のひら側の指の付け根(MP関節)のあたりが痛んだり腫れたり、熱を感じることがあります。

動かしにくさ・こわばり
 朝起きたときに特に強く、指がこわばって動かしにくくなったりします。

症状の進行
 初期は痛みや違和感程度ですが、進行すると自力で伸ばせず他の指の力などで無理に戻す状態になることもあります。重症化すると関節が固まり生活動作に影響することもあります。

多発と再発
 複数の指に出たり、改善しても再発しやすい特徴があります。


●ばね指の治療

 治療は大きく「保存的治療」と「手術的治療」に分かれます。

保存的治療
安静・負担の軽減
 最も重要なのは、指の使いすぎを避けることです。無理に動かさず休ませると初期は自然に改善することもあります。

固定・装具療法
 添え木やサポーター、テーピングなどで指の動きを制限し、炎症を抑えます。

薬物療法
 痛みや腫れの改善に湿布や非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)などを使用することがあります。

ステロイド注射
 痛みや炎症が強い場合は腱鞘内に直接ステロイドを注射して腫れを素早く抑えます。ただし回数は制限され副作用にも注意が必要です。

理学療法(リハビリテーション)
 ストレッチ・マッサージ・温熱療法などで可動域を維持し、改善後の再発予防も目指します。

手術的治療
腱鞘切開術
 保存的治療でも改善しない場合や、毎回再発を繰り返す場合には、局所麻酔下で腱鞘を切開して腱の動きを滑らかにする手術が行われます。1~2cm程度の切開で日帰りまたは短期入院で可能なことが多いです。

術後のリハビリ
 手術後もリハビリや運動療法を継続し、固くならないようにします。

予防・セルフケア
・長時間指を使う作業ではこまめに休憩を入れる
・指のストレッチや温冷療法を行う
・違和感や痛みを感じたら早めに対策を講じる

 ばね指は手をよく使う現代社会で増えている疾患です。早期に発見し、適切な治療と予防ケアを行うことで、長引く痛みや不便を防ぐことができます。症状が長引く場合は自己判断せず、早めに専門医の診察を受けることが大切です

 

手指痛疾患(日常よく見られる疾患)

*上記疾患は日常よく見られる疾患です。他の疾患が原因となっている場合もございますので、一度ご来院いただき、詳しく問診・検査を受けられることをおすすめいたします。