粉瘤(アテローム)とは
粉瘤(ふんりゅう)は、「アテローム」とも呼ばれる、皮膚の下にできる良性のできもの(腫瘍)です。これは、皮膚の表面にあるはずの細胞(表皮細胞)が、何らかの理由で皮膚の深い部分(真皮)に袋状の構造を作り、その中に角質(垢)や皮脂が溜まってできる「のう腫(のうほう)」の一種です。
イメージとしては、皮膚の下にできた小さな「ゴミ袋」のようなもので、溜まっている内容は悪性の細胞ではありません。袋の大きさは数ミリ程度のものから、こぶし大になるものまで様々です。
体中のどこにでもできますが、特に顔、首、背中、耳の裏、脇、股などによく見られます。
粉瘤(アテローム)の原因
粉瘤ができる原因は、完全に解明されているわけではありませんが、主に以下のことが考えられています。
外傷や炎症による表皮の迷入
皮膚にできた小さな傷や、ニキビなどの炎症がきっかけとなり、本来皮膚の表面にあるべき表皮細胞が、皮膚の深い層に潜り込んでしまう(迷入する)ことで袋が形成されると考えられています。
先天的な原因
生まれつき、皮膚の成分が皮膚の深い層に存在する「遺残(いざん)」が原因となる場合もあります。
毛穴の詰まり
特に毛穴が多く皮脂腺が発達している部位では、毛穴の出口が詰まることで皮脂や角質が排出されず、袋状に溜まってしまうことが原因となることがあります。
誰にでも起こり得るもので、特別な病気や不衛生が原因ではありませんのでご安心ください。
粉瘤の症状
粉瘤の症状は、大きく「炎症がない時」と「炎症を起こした時」の2つに分けられます。
1.炎症がない時の症状(通常の粉瘤)
しこり: 皮膚の下にドーム状に盛り上がったしこりとして触れます。通常は柔らかく、弾力性があります。
中央の黒点(開口部): しこりの中央に、黒っぽい小さな穴が見られることがあります。これは、袋が皮膚の表面とつながっている「開口部」で、この穴を押すとドロドロとしたり、臭いを伴う白い内容物が出てくることがあります。痛みやかゆみ:
通常、痛みやかゆみはありません。
2. 炎症を起こした時の症状(感染性粉瘤・化膿性粉瘤)
粉瘤の袋に細菌が感染し、炎症(化膿)を起こすと、急激に症状が悪化します。
痛み: ズキズキとした強い痛みを感じるようになります。
腫れ・赤み: 周囲の皮膚が赤く腫れ上がり、熱を持つようになります。
排膿: 炎症が進むと、袋が破れて膿が出てくることがあります。
この状態を「炎症性粉瘤」または「化膿性粉瘤」と呼び、急いで治療が必要になります。
粉瘤の治療法
粉瘤は自然に治ることはなく、治療には外科的な処置が必要です。
1. 炎症がない場合の治療:手術(根治術)
炎症がない状態であれば、手術によって袋ごと完全に摘出します。これが粉瘤を根本的に治す唯一の方法です。
くり抜き法: 小さな穴を開けて袋を抜き取る方法で、傷跡が目立ちにくいのが特徴です。
切開法 : 粉瘤の大きさや部位に応じて皮膚を切開し、袋全体を丁寧に剥離して取り出します。
手術は局所麻酔で行うため、術中の痛みはほとんどありません。
2. 炎症がある場合の治療:炎症を抑える処置
炎症を起こしている場合、まずは炎症を抑える処置を行います。
切開・排膿: 腫れて膿が溜まっている部分を小さく切開し、膿を出す(排膿)処置を行います。これにより痛みや腫れが速やかに改善します。
抗生剤(内服薬): 細菌感染を抑えるために、抗生物質の飲み薬を服用します。
炎症が強い時期に無理に袋全体を取ろうとすると、傷が大きくなったり、再発しやすくなったりするため、一度炎症が治まるのを待ちます。炎症が治まった数か月後に、改めて根治的な摘出手術を行うのが一般的です。
気になるできものがある場合は、自己判断せずに、大門病院にお気軽にご相談ください。