骨粗しょう症とは

　骨粗しょう症（骨粗鬆症）は、骨の密度や質が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる疾患です。加齢やホルモンバランスの変化により進行することが多く、特に高齢者や閉経後の女性に多くみられます。日本では約1000万人以上が骨粗しょう症と推定されており、社会の高齢化とともに患者数も増加傾向にあります。
　健康な骨は適度な硬さとしなやかさを持っていますが、骨粗しょう症では骨の内部がスポンジ状にスカスカになり、力が加わると簡単に骨折してしまう状態となります。この疾患自体に初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行することが多い点が特徴です。

骨粗しょう症の原因

　骨粗しょう症の主な原因は、以下のように多岐にわたります。

加齢
　年齢を重ねるごとに骨密度は徐々に低下します。特に女性は閉経を境に女性ホルモン（エストロゲン）が急減し、骨吸収のスピードが骨の形成を上回るようになるため、発症リスクが高まります。

女性ホルモンの減少
　エストロゲンには骨を守る働きがありますが、閉経により分泌量が急激に減少すると骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨量が減少します。

栄養不足・生活習慣
　カルシウムやビタミンD、ビタミンKの摂取不足、極端なダイエット、運動不足なども大きなリスクです。また、喫煙や過度な飲酒も骨の質を悪化させます。

疾病や薬剤の影響
　糖尿病や慢性肝障害、卵巣摘出手術、長期ステロイド薬の使用など、他の疾患や治療が原因となる場合もあります。

　このほか遺伝や体格、家族歴も発症リスクに関与します。これらが複合的に絡み合う疾患であることが現在明らかになっています。

骨粗しょう症の症状

　骨粗しょう症の初期はほとんど症状がありません。しかし疾患が進行すると、ちょっとした転倒やくしゃみ、重いものを持つなどの軽い衝撃で骨折しやすくなります。

＊骨折しやすい部位としては次のものが挙げられます。

脊椎（せぼね）の圧迫骨折
　背骨が体重や負荷に耐えられず潰れることで、腰痛や背中の痛み、身長の低下、背中や腰が曲がるといった症状が現れます。

大腿骨頸部（太ももの付け根）の骨折
　歩行困難や寝たきり状態に直結しやすく、要介護の大きな原因となります。

手首や腕の付け根などの骨折
　転倒時に手や腕をついたときなど、比較的軽い外力で骨折してしまいます。

　また、背が縮んだり、背中や腰が曲がったりするのも骨粗しょう症の進行による症状の一つです。これらの変化は日常生活動作を著しく制限するだけでなく、内臓への圧迫による消化不良や息切れなどの二次的な健康障害ももたらすことがあります。

骨粗しょう症の治療

　骨粗しょう症の治療は、骨折を予防し骨密度や骨質を改善することが目標です。

薬物療法
　代表的な薬剤には、骨が壊されるのを防ぐビスホスホネート薬、骨形成を促進する副甲状腺ホルモン薬、エストロゲン様作用を持つSERM（選択的エストロゲン受容体モジュレーター）、活性型ビタミンD製剤、抗RANKL抗体薬などがあります。患者の病態や骨折リスクに合わせて最適な薬剤が選択されます。

食事療法
　カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど骨の健康維持に必要な栄養素の十分な摂取が重要です。日光浴もビタミンD合成のために効果的です。

運動療法
　適度な運動は骨への刺激となり、骨密度の維持や筋力の強化による転倒予防に役立ちます。特にウォーキングや片足立ち運動など継続しやすい運動が推奨されています。

生活習慣の改善
　禁煙や適度な飲酒、バランスの良い食生活、適度な体重管理が大切です。

　治療と並行して定期的な骨密度の測定や、転倒・骨折リスクの評価・予防を行うことも重要視されています。進行した場合も適切な治療で骨折を予防し、健康寿命を伸ばすことが可能です。自己判断で治療を中止せず、医師と相談しながら継続することが骨粗しょう症克服のカギとなります。
　大門病院では骨粗しょう症が心配な方に対して検査・治療を行なっています。お気軽にご相談ください。